■お米を安定してたくさん収穫するための工夫とは?
健康で丈夫な稲を育てる「土づくり」
1つ1つの田んぼによって土が違い、毎年の天気が違うので、それに合わせた土づくりが必要です。特に、雨の多い日本では酸性の土壌になりやすく、根が傷んだり養分吸収を妨げたりしてしまうことも。この場合は、苦土石灰(くどせっかい)を撒くなどして土壌の酸度を調整します。
※苦土石灰(くどせっかい):土のアルカリ性を増すために使われる、白色の粉末状もしくは粒状の肥料
次に、稲に必要な栄養素を十分に補給するため、不足している栄養素を中心に元肥を施します。加えて、有機肥料で、有益な微生物(バクテリア)が住みやすい環境も整える必要があります。
肥料について詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。
「稲作に必要な肥料とは?基肥・追肥の与え方や過不足による影響も解説」
また、水はけの良さは大切ですが、良すぎても肥料や水分を保てません。水はけが良すぎたら、粘土を加えて適度な水はけに調整します。もともと粘土質すぎる場合は掘り起こすだけで大変なので、そもそも使わないことが多いです。
稲の成長に欠かせない「水の整備」
清浄な水をいつでも必要なときに田んぼに入れるため、水の整備を行います。田畑への水やりのことを灌漑(かんがい)と言い、稲に対する灌漑は「水田灌漑」とも呼ばれます。
例)パイプ灌漑:地下にパイプをめぐらし、河川の上流にある取入口から直接田んぼに入る。田んぼ1枚1枚に対し、水道の蛇口がついている。必要なときに必要なだけ水やりができる
また、田んぼの水がもれないよう、周囲には畦(あぜ)という土手のようなものを作ります。生育のためには水を入れたり抜いたりする過程が必要なので、水の整備は特に重要です。
土地や消費者のニーズに合う「品種選び」
土地や気候に合わせた丈夫で収量の多い生産性の高い品種、消費者が好む美味しい品種など、さまざまな観点から選ばれます。そのための品種改良が行われることもありますが、田植え・収穫・乾燥などの作業が一度にならないよう、時期をずらして以下のような品種をバランスよく栽培するのが一般的です。
・早生品種(わせひんしゅ):実りが早い
・晩生品種(ばんせいひんしゅ):実りが遅い
・中生品種(ちゅうせいひんしゅ):実りが早生品種と晩生品種の中間
手間ひまかけて美味しく作る「無農薬・減農薬農法」
農薬や化学肥料はお米の安定した生産を助け、病害虫から守る大量生産に向いています。もちろん、用法・用量を守れば安全ですが、農薬や化学肥料を使わない昔ながらの農法が美味しいという意見もあるため、以下のような農法でできるだけ農薬を使わず作られることもあります。
◯合鴨農法:水田に合鴨を放し飼いにする。害虫や雑草を食べてくれ、フンが有機肥料に
◯有機肥料の見直し:稲作農家と畜産農家が協力し、ワラと家畜のフンを発酵させて質の良い「堆肥」を作る取り組みなど
○コイ農法:鯉が田んぼを泳ぎ回ることで、泥がかき回されて雑草の生育・発芽を抑え、除草効果を得る
○レンゲ栽培農法:秋に田んぼにレンゲの種をまき、冬の間に育て、春に花を咲かせたレンゲを土に鋤き込んで肥料にする。レンゲは空気中の窒素を取り込んで根に溜め込むので、窒素肥料の代わりになる
○海藻リキッド農法:海藻のミネラルで葉緑素を増やし、保湿力を高めて気温や空気の影響を和らげ、作物の鮮度を保ちやすくする