■農薬を使用しない病害虫の防除方法②
2、天敵や微生物などを利用して病害虫を抑制する「生物的防除法」
病害虫の天敵となる昆虫や植物を利用して病害虫を退治あるいは抑制する方法です。
①天敵を活用する
害虫の天敵類は生物農薬として販売されているものもありますが、花壇や菜園でよく見かける天敵にはナナホシテントウ、カマキリ、ヒメハナカメムシなどがいます。害虫を100%退治できるわけではありませんが、できるだけ保護してくだい。
また、ナメクジを捕食する天敵にコウガイビルがいます。1~2mm程度の太さで、真っすぐ伸ばすと20~30cm程度の長さになり、夜中にクネクネと這い、ナメクジを捕食する天敵です。一見、ナメクジより不快な感じを与える肉食動物です。
②緑肥を活用する
花壇では難しいかもしれませんが2~3カ月間、何も育てる予定のない菜園では緑肥の活用がおすすめです。マリーゴールド、エンバク、ライムギなどを植え、大きくなったら刈り取って土に混ぜ込みます。緑肥に使用する植物の種類によって異なりますが、センチュウ類の抑制、土を軟らかくし水はけなどをよくする、有益な菌や微生物を増やし病原菌の活動を抑制するなどの作用があります。
3、熱や光など物理的な方法で病害虫を抑制する「物理的防除法」
文字通り、資材や道具などを利用して物理的に病害虫の被害を抑制します。
①マルチングをする
マルチングとは植物の株元の地表面をシートやわらなどで覆うことです。マルチングをして苗を植えると、降雨などの土の跳ね返りで土壌病原菌が植物に付着するのを防げます。また、黒や緑色のマルチは雑草の発生を抑制します。
②シルバーマルチやシルバーテープを利用する
アブラムシなどの昆虫はギラギラ光るものを嫌います。シルバーマルチを敷いて苗を植えるとアブラムシなどの飛来を防げます。同様にシルバーテープを植物の周辺に張り巡らすと飛来する害虫から植物を守ることができます。
③寒冷紗(かんれいしゃ)や防虫ネットを利用する
トンネル栽培では、寒冷紗などの中で作物を育てることで、害虫が作物に付着することを防げます。寒冷紗を洗濯ばさみなどで留める人もいますが、裾から害虫が侵入して思わぬ被害を受けることがあるので注意してください。必ず裾に土をかけて重しをして害虫の侵入を防ぎます。
害虫防除のコツとしては、種をまいた場合は「種まき直後」または「芽が出る前」に植えた場所に直接散布すること。苗または植物が育ってから処理する場合は「トンネル掛けをした直後に殺虫剤をトンネルの上からまんべんなく」散布すると効果的です。
④粘着紙を利用する
黄色の粘着紙はアブラムシやコナジラミが好み、飛来した害虫を付着させて被害を防ぎます。ブルーの粘着紙はアザミウマが好みます。
⑤防草シートを利用する
通路や畝間などに防草シートを張ると、雑草の発生を抑制できます。隙間なくシートを敷いて、留め具でしっかりシートを固定するのがコツです。隙間があるとそこから光が入り、雑草が生えてきてしまいます。
コラム:マルチ(マルチング)の種類
主に黒いマルチが使用されますが、冬季などでは地温を上げるために透明マルチを使用することもあります。シルバーマルチは光を反射するため、生育初期のアブラムシなどの害虫の寄生を防ぎます。
マルチには以下の利点があります。
・土の保温や保湿に優れ、降雨などにより土が硬くなるのを防ぐ
・病害虫を防ぐ
・降雨などの土の跳ね返りでの土の中に生存する病原菌から作物への感染を防ぐ
・透明のマルチ以外は光を通さないため雑草の発生を防げる
病害虫防除の基本は今回解説した栽培環境、栽培方法などに気を付けることです。しかし、害虫は翅(はね)があり、飛んでくる種類が多く、病原菌も風によって運ばれてきますので、気を付けていても病害虫が発生することがあります。
今まで解説した農薬なども上手に使用して、病害虫から植物を守り、花壇や菜園などの園芸を楽しんでください。